第十章:なぜ人は楽な稼ぎ方、MLM(マルチ商法)に飲み込まれてしまうのか


あの頃の自分を振り返る

第二章から第七章までで書いてきた経験は、
すべて異なる出来事のようでいて、本質は同じだった。

それは MLM(マルチ商法) という仕組みだった。

名称も、入口も、関わった人も違った。
しかし振り返ると、驚くほど共通点があった。

当時の自分は、特別なことをしているつもりはなかった。

ただ人と出会い、話を聞き、
少し世界を広げようとしていただけだった。

怪しいことに関わるつもりなど、一切なかった。

それでも気づけば、
同じ構造の中に何度も足を踏み入れていた。

なぜだったのか。


MLMに共通していた入口

MLMは、最初からビジネスとして始まらない。

友人。
知人。
マッチングアプリ。
コミュニティ。
イベント。

入口はいつも「人」だった。

勧誘ではなく、出会いとして始まる。

だから警戒しない。

むしろ安心する。

そして徐々に、

・夢の話
・成功者の話
・自由な働き方
・収入の可能性

が語られ始める。

ビジネス説明より先に、
理想の人生の話が来る。

ここが最大の特徴だった。


違和感よりも先に生まれる感情

当時、自分は強い違和感を感じていたわけではなかった。

むしろ逆だった。

歓迎される。
名前を覚えられる。
肯定される。

そこには「居場所」があった。

社会人になると、新しい人間関係は簡単にできない。

だからこそ、

「仲間」
「チーム」
「一緒に成長」

という言葉が自然に心へ入り込む。

MLMが扱っているのは商品だけではない。

感情そのものだった。


本当に求めていたもの

振り返ると、自分が欲しかったのはお金ではなかった。

・認められる感覚
・将来への安心
・変われる可能性

だった。

MLMはそこを正確に突いてくる。

だから参加する人は、特別ではない。

むしろ真面目な人。
頑張ろうとしている人。
現状を変えたいと思っている人。

そういう人ほど巻き込まれていく。


共通していた違和感

どのMLMにも、同じ空気があった。

「楽しい」
「仲間が増える」
「頑張ろう」

繰り返される言葉。

成功しているという話。
お金があるというアピール。

しかし周囲をよく見ると、
本当に余裕があるようには見えなかった。

なぜ成功している人が、
新しい人を探し続けているのか。

その疑問に答えが出たとき、
仕組みの輪郭が見え始めた。


MLMの本質

MLMは違法なものだけではない。

しかし構造として、

人を増やし続けなければ成立しない

という特徴を持っている。

だから勧誘は終わらない。

仲間づくりは目的ではなく、
必要条件になる。

そこに気づいた瞬間、
自分の中で何かが冷静に戻った。


なぜ人は飲み込まれるのか

MLMに入る理由は「お金」ではない。

多くの場合、

・孤独
・不安
・焦り
・自己否定感

そういった感情の隙間に入り込む。

だからこれは、
騙される・騙されないの問題ではない。

人間なら誰でも起こり得ることだった。


今だから言えること

もし今、似たような話を聞いている人がいるなら。

一度だけ考えてほしい。

その場所は、
あなたの人生を良くするためのものなのか。

それとも、
あなたが必要とされているだけなのか。

人生は変えられる。

でもそれは、
急に現れる「特別なコミュニティ」ではなかった。

遠回りでも、自分で選び続けた道だけが、
あとで自分を守ってくれる。

第二章から第七章までの出来事は、
失敗ではなかった。

自分が判断を取り戻すまでの過程だった。

▼続きはこちら

第十一章:MLMを離れた後、静かに始まった現実

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