第十二章:何者でもない自分を受け入れた日


期待していた社会人生活

社会人になれば、自然と人生は整っていくと思っていた。

仕事を覚え、給料をもらい、恋人ができ、周りと同じように前へ進んでいく。
学生の頃は、なんとなくそんな未来を想像していた。

しかし現実は違った。

周囲は成長しているように見え、自分だけが置いていかれている感覚。
社会人一年目の冬、焦りだけが静かに積み重なっていった。

「何かを変えなければいけない」

その感情が、すべての始まりだった。


成功したかったわけではなかった

今振り返ると、成功したかったわけではなかった。

安心したかっただけだった。

  • 周囲より遅れていないと思いたかった
  • 自分にも価値があると感じたかった
  • このままでいいと言ってほしかった

だからこそ、MLM(マルチ商法)の世界に惹かれた。

そこでは否定されない。
夢を語れば褒められる。
仲間と呼ばれる。

現実社会で感じていた不安が、一時的に消える場所だった。


なぜ人はMLMに飲み込まれるのか

MLMに関わって気づいたことがある。

人が飲み込まれる理由は、お金ではなかった。

感情だった。

  • 楽しい
  • 仲間が増える
  • 頑張ろう

何度も聞いたこの言葉。

気づけば、自分もその空気の中にいた。

否定されない環境は居心地がいい。
だから疑問を持たなくなる。

そしていつの間にか、「所属していること」自体が目的になっていく。


違和感の正体

しかし、時間が経つにつれ小さな違和感が積み重なった。

「お金がある」
「自由になれる」

そう語る人は多かった。

けれど、

本当に余裕があるようには見えなかった。

肌は荒れ、常に誰かを勧誘し続け、時間にも余裕がないように見えた。

本当に満たされている人が、
なぜここまで必死に人を増やし続けるのか。

その疑問が頭から離れなくなった。

そして気づいた。

これは成功の道ではなく、
安心を求め続ける循環だったのではないかと。


第一章で書いた「ブログを始めた理由」

第一章でも書いた通り、
そもそも自分がブログを始めた理由は明確だった。

過去に経験した出来事を、整理したかったからだった。

失敗したこと。
焦ったこと。
判断を誤ったこと。

時間が経てば、記憶は都合よく書き換わっていく。

だからこそ、
当時の自分の感情を、そのまま残しておきたいと思った。

これは成功談ではない。

むしろ逆だった。

同じように迷っている誰かが、
「こういう経験をした人もいる」と知る材料になればいい。

それがブログを書き始めた原点だった。


過去に始めたブログとの違い

実は、ブログ自体は今回が初めてではなかった。

以前にも一度、ブログを始めたことがあった。

その時の理由は単純だった。

稼ぎたかった。

副業。
不労所得。
成功。

結果を急ぎ、正解を探し、早く成果を出そうとしていた。

だから続かなかった。

書くことより、「稼げるかどうか」が先にあったからだった。


今回のブログが続いている理由

今回のブログは違った。

稼ぐためではなく、
自分を理解するために書いている。

なぜ焦ったのか。
なぜ言葉に惹かれたのか。
なぜMLMという環境に近づいたのか。

書くことで、初めて見えてくるものがあった。

これは誰かを否定するためでも、
何かを暴露するためでもない。

ただ、自分の歩いてきた道を、誤魔化さず残しているだけだった。


何者でもないという現実

離れたあとに残ったのは、シンプルな現実だった。

自分は特別な人間ではない。
すぐに人生が変わる人間でもない。

ただの社会人だった。

でも、不思議と楽だった。

何者かになろうとして苦しかったのだと、初めて理解した。

何者でもないところから始めればいい。

そう思えた瞬間だった。


ここからが本当のスタート

MLMを離れたことで、人生が好転したわけではない。

劇的な変化もなかった。

ただ一つ変わったことがある。

近道を探すのをやめた。

その代わりに考え始めた。

自分にとって、続けられるものは何か。

成功より難しいもの。
それは、続けることだった。

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第十三章:空白の四年、そして再出発

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