前編で書いた通り、私はその場の空気に流される形で「決断」をしてしまった。この判断を、のちに何度も後悔することになる。 結果として、その日のうちにお金を支払うことになった。
正直に言えば、金額を振り込んだ瞬間から、心のどこかに小さな違和感はあった。 ただその感覚にフタをして、「ここから何かが始まるんだ」と自分に言い聞かせていた。
謎の教材と会員専用グループ
支払いが完了すると、いくつかの資料とUSBのようなものを渡された。本来であれば、そのUSB内にある資料を自分でダウンロードして学習する流れだったらしいが、実際にはうまく使えず、アップラインと呼ばれる上の立場の人から資料を個別にもらう、という手間のかかる形になった。 ただ、そのUSBは一般的なケーブルでは接続できない仕様で、正直なところ扱いづらかった。
「これが特別な教材なんだ」 そう思い込もうとしたが、内容自体は抽象的で、何か明確なスキルが身につく感覚はなかった。
同時に、LINEの会員専用グループへ招待された。 そこには、私と同じように参加した人たち、そして勧誘してきた人や、その上の立場と思われる人たちがいた。
毎日の進捗報告と週末の講演会
そのグループでは、毎日の進捗報告が求められた。 「今日は何を学んだか」「どんな行動をしたか」 内容よりも、報告すること自体が目的になっているように感じた。
さらに、毎週土曜日には講演会と称した集まりがあった。 内容は毎回似たようなもので、 ・行動量の重要性 ・成功者のマインド ・環境に身を置く意味 といった話が繰り返されていた。
最初は「これも必要なプロセスなのかもしれない」と思っていたが、回を重ねるごとに、次第に嫌気が差していった。
相談しても変わらない現実
アップラインやグループ全体に対しても、少しずつ不信感を覚えるようになり、一度、正直な気持ちを相談したことがある。 「何をすればいいのか分からない」 「このままで本当に大丈夫なのか」
その際には、「問題ない」「ちゃんと相談に乗るから大丈夫」といった、離れないようにするための甘い言葉もかけられた。しかし、実際に返ってくる答えは、決まってこうだった。
「行動量が足りない」 「疑っている時点で成長できていない」
その場では納得したような顔をしたが、心の中の違和感は消えなかった。
叱責と違和感の増幅
ある時から、勧誘してきた人物の態度が変わった。 進捗が思うように出ていないことに対して、叱責されるようになったのだ。
「本気でやっているのか」 「このままじゃ結果は出ない」
その言葉を受け取るたびに、気持ちはどんどん重くなっていった。
自分で調べた先にあったもの
さすがにおかしいと思い、私は初めて自分で調べ始めた。 SNSやネットで、似たような体験談を探した。
すると、同じような流れ、同じような言葉に違和感を覚えた人たちの声が、いくつも見つかった。
その瞬間、頭の中で何かがはっきりと繋がった。
「ああ、自分は判断を急がされていたんだ」
脱退という選択
それから私は、少しずつ距離を取るようになった。 LINEのやり取りには返信せず、講演会にも参加しなかった。
明確な脱退の宣言をしたわけではない。 ただ、そのまま音信不通になるという形で、そこから離れた。
結果として、約50万円という金額は戻らなかった。 しかし、それ以上に大きな学びが残ったと思っている。
それは、「焦っているときほど、人は冷静な判断ができなくなる」ということだった。
この経験は、決して誇れるものではない。 ただ、同じような状況にいる誰かが、立ち止まるきっかけになればと思い、ここに残しておく。